Eid Mubarak!  エマージングマーケット考

ラマダンが終わり、いろいろな方からEid Mubarak(ラマダン明けおめでとう)のメールが飛び交う時期。
ラマダンの終わる直前にイギリスに帰国し、現在はロンドン。


帰国途中で食中毒にかかるというアクシデントもありましたが、いろいろな意味で浄化されたので良しとしましょう。生野菜をほとんど食べられない国では太る一方ですが、最後の最後に改善された感じです。この荒療治でいいかどうか分からないけれど・・・。


やはり貧困国にありがちなのが、「野菜=貧困層の食べ物」「肉=リッチな人の食べ物」という観念で、富裕層と一緒にいると野菜をあまりに食べないし、肉の方を重宝する。
一方で、貧困層自身も自ら作った野菜のうち最も良い野菜は売ってしまうので、栄養素の少ない野菜を食べる以外ない。
栄養価の高い野菜たちはありがたく食べてくれる人がいない中で、きちんと栄養を届けたい相手には届かないまま消費されている。


貧困に関する様々な書籍、思想、などを辿ると最終的には、富の分配の公平さに関する思想にたどりつく。AllocationやDistribution(分配論)などと呼ばれているが、社会福祉の思想史を辿ると出てくる。
結局のところ、「最も必要とされる人に、最も必要とされる物を分配する」ことができる「最も効率の高い仕組み」は何か、が問われている。
それを今までは公共セクターがやるべき、とされていたが、公共セクターが破綻している国や公共セクターではまかないきれないニーズがある地域では他の力も必要となる。


この際、ほかに頼るべき力として、ビジネスに着目しているのは、この「最も必要とされる人に最も必要とされる物を」とどけることで利を得るから。
マーケティングの考え方が最たるもので、相手のニーズをいかに読み解くかが問われている。そして、それを最も効率の高い(つまりコストがかからない)手法で供給するか、がビジネスで要求される手腕だと思う。



ただ、「最も必要としている人」が「お金がない」という条件がつくのが、貧困層向けのビジネスの特徴。
しかし、お金がないから買わないのではなく、買うための様々な工夫を提供すれば買うことも可能になる。この工夫に新興国発の企業やBOPに参画してきた企業が何度も挑戦し、様々な手法を生み出してきた様子。
その工夫をしてまで貧困層にリーチする必要があるのだろうか、と疑問視してしまう方にはお勧めできないが、その工夫をして新しい市場について深く知り、次世代の世界観を養いたい方が挑戦されるようだ。
現に、新興市場でお会いした方々はみな、その重要性を熟知しながら、今までの戦略方法からどのようにシフトすべきなのかをその方なりに試行錯誤しておられる様子だった。


いくつかの日本企業もようやくEmerging market teamを今年に入ってから結成した様子だ。数名から十数名程度を単位に、チームアップを組み始めているという風の噂。


ただし、最初から利益を得ることだけを目的に貧困層市場とお付き合いすることは難しいだろう、と思われる。多々の失敗例を見る限り、利益を得るためのお付き合い以上の、大きな理解と学びを得られることを踏まえて、長期的な付き合いをされた方々が成功している様子だ。


BOPビジネスは新興市場戦略なのか、と言われれば、Yesである。市場戦略であることには間違いない。ただし、それは今までの市場戦略と異なるスタンスが問われる。


BOPビジネスに成功し、継続させている多国籍企業新興国発企業の誰に聞いても「柔軟性」が鍵と答える。大きな組織の中で、どこまで柔軟性を担保しながら、新しい市場と向き合えるか。これは新しい組織改革を意味している。自分自身を変えることができるか。Transformative Company(流動性のある企業、とでもいおうか)としてBOPビジネスに取り組む企業を取り上げたケーススタディも多い。
BOPビジネスはビジネスピープルの側面からしてみれば、新しい市場戦略に対応するための組織改革なのだと思う。


そして最も企業が必要とされる役割、「最も必要としている人」に「必要とされているもの」を届ける「分配」の役目を果たすことができるか。非常に根本的なことなのだが、その根源を何度も何度も確認すれば、自然と柔軟な対応ができる「強い企業」へと変わっていくようだ。


必要とされているものを必要な人に届ける「強い企業」になりたいと考え、組織改革も含めて真剣に考える方々が、日本からも今少しずつ動き始めているのであれば、面白い動きになっていくだろう。