知識のミクスチャーを求めて   「Amartya Sen : Idea of Justice」

インドのバンガロールの空港でやたら時間がありましたので、買ったのがこちらの本。
今年の7月末に発売。


インドですと半額だったので、買ったのですが、この一冊でおそらく2〜3食分の豪華なご飯にはありつけるので、やはり知識へのアクセスというのは難しいなあと感じました。


The Idea of Justice

The Idea of Justice


規範などについて語ったロールズへの追悼メッセージが少しあり、基本的には規範論や正義論に関するまとめを、アマルティア・センの見方と語り口でまとめたものですが、非常に面白い。私としては、こういうまとめ方を待ち遠しく思っていたので、さっそくフライトから読みふけりました。


しかし分量が多いのでゆっくりと読もうと思います。


たまにはこういう読書もいいと思います。ビジネス書と言うのは私は苦手なのですが、一生何度も読み直したくなるような書籍というのは重要です。

やはり、規範、正義という考え方は、実はBOPや農村部におけるアクセスの平等性を考えていく上では欠かせない要素だと思います。
政治の概念としてだけに閉じ込めることなく、本当のビジネス展開の上でも参考にしていくことで新たなチャンスが生まれることと信じています。


特に、アマルティア・センの潜在能力やエンパワメントの考え方を、いかにビジネスというものと結びつけ、実施させていくかを日ごろ考えているので、センが正義についてどう考えているかを知るのは面白いなあ、と思っています。


そして、これを読み終わったら、ロールズが他界直前に執筆していた、「Law of the people」も再読しなければと思いました。私はこれを読んで、ボトムアップに法律や仕組みを作っていく手法について学んだことをよく覚えています。
(ですがいまや忘れてしまっていますので、再読が必要!)


バングラデシュでも、ロールズについてどう思うか、と地元の知識層と話をすることがありました。文学や哲学についても、様々な知識を交換しあうことで、お互いのスタンスを確認することができます。

やはり、スタンスというのは重要で、相手がどういった書籍を読んできたかで、お互いの距離感を確かめあうプロセスというのは確かに存在します。

エマージングマーケットを知るには、こういった知識層たちが何を読み、何を考え、何から発想するかを知ることが重要だと、今回の渡航で強く知りました。

インドの知識人たちとの意見交換の中では、盛田昭夫を読み、大前研一を読むと同時に、ガンジーを読み、ギータを読みます。彼らはアダム・スミスも読めば、マイケル・ポーターも読むのです。
この組み合わせから出てくる発想を、私たちがどれだけ理解できるか、それにかかってきているのです。


この組み合わせが私たちが思いつかないほどクリエイティブだということを、理解いただけるのではないでしょうか。日本の新聞と日本のメディアだけを追い続けていては、到底及ばないクリエイティブさを持ち合わせているということを。

彼らとボトムアップで手を組むことの素晴らしさは、こうした文化と知識のミクスチャーなのだと思います。