長期雇用という社会貢献

アフリカ近辺に少し行っていましたが、来週からはまたすぐ南アジア地域です。最近は、自分だけでなく、同じチームのメンバーにもこの強行スケジュールを課すようになってきて、被害者が続出中。
でも、みな楽しんで、旅をしながら仕事をする、そういうスタイルになってきたな、と思います。(前向きな捉え方・・・)


アフリカで思うのは雇用形態があまりにいびつだということ。馬鹿みたいに給料が高いのです。例えば、マネージャーやコンサルタント業と言ってもレベル感はばらばらですが、この途上国において月々30万〜40万円くらいは序の口。きちんとしたマネージャーをローカルで雇おうとすると、50万円/月くらいになります。他の途上国では信じられない価格だったりします。

しかも、難しいのはその「きちんとした」を見つけ出すのがかなりハードルが高いこと。そのため、「きちんとした」だと思って雇ってみても、「きちんとした」に達しておらず、結局トライアル期間で解雇しなくてはならないが、またアフリカで解雇するのは非常に大変。というわけで、結局色々なコストが無駄になります。


南アジア地域は優秀な人材や教育レベルの高い人材が一気に人口が増えてきているので、比較的安く、優秀でよく働く人材を手にすることができます。なので、大体7−8万円/月で、大学卒業の優秀なエントリーレベルの人を雇うことが可能なのです。(これはインドの特定の地域での話なので、違う場所もあるでしょうから、あくまで参考にしてください。)


確かにジョブホッピングも多いのですが、それ以上に長期雇用的な流れも脈々と続いていて、やはりカーストなどがあるためひとつの仕事や技術職に一生ついていく、という人も多いのが現状。そういう意味では、あまり余所見をする人も少ないなあ、という気がしています。(一部のエリート層を除く)


一方でアフリカは、まず大学を出ている時点で相当のエリートなので、その時点で給与ががくんと上がってしまいます。一方で、留学から帰ってきて、地元企業の職につけず(給与が高すぎるため、地元企業が払えない)ふらふらと浮遊コンサルタントになっている人が多いのも印象的。(そういう人にはいろんな国で出会いますが、東西アフリカ地域の若い層は多いですね)
彼らは国際NGOの職や、UNや開発援助機関の職を狙っているか、または、大学でのレクチャーをしていたりする人が多いです。実際の職務経験を現場で積む機会が少ないまま、頭でっかちになってしまう人が多いのが難なのですが、こういう人材にもっと定職を、そしてロイヤリティの高い定職を、今後は与える企業が増えていけば、全く違う勢いの経済になるだろうなあ、と思うのです。

というのも、国際NGOや開発援助機関の職も、ほとんどが契約コンサルタントだったりするので、長期雇用ではない。しかし給与額はいい。なので、彼らはそういう職にがんばって就こうとするのですが、その後が続かない。


以前、ケニアナッツの佐藤さんの記事を読んでいた際に、「アフリカには長期雇用してあげる会社がない。うちの会社は長期雇用をすることで、安定的な生活を提供し、人生計画を立てることができる。これを他の会社もモデルとして見習って、ケニア中に広がっていけばいい」というお話をされていました。


よくアフリカに行くたびに、日本の戦後復興からの立ち上がり時期に行った、様々な政策や経済復興、そして中小企業の増殖などを思い、色々調べるのですが、やはり、人々の生活にいちばん大きな効用を残したのは長期雇用だったのかもしれません。

2年ほど前にフィリピンでとある日本企業を訪問した時も、非常にロイヤリティの高い社員を雇用することがモットーで、それが長期雇用の成功と、事業発展に繋がっているという話をご一緒させていただいたことがありました。


アフリカや南アジアで日本企業の皆さんと一緒に出かけると、「私は勤続20数年で・・・」という方がいらっしゃって、自己紹介をされるたびに、現地の人達がはっと息を呑むのです。

「20数年も同じ会社にいるなんて・・・」というのがまず設定条件として信じられない様子なのですが、それだけ安定的に仕事ができる状況というのを、想像することができない。


様々な貧困を目の当たりにしますが、これもひとつの貧困なのだな、と思うのです。
何も長期雇用万歳といっているわけではなく、長期雇用の存在を想像できないほど不安定な生活環境の中で生きていくことの、プレッシャーの大きさについては、私も想像できないかもしれません。


長期雇用という社会インフラほど、人々が成長していく際に人生の選択をする上で影響を与え、子どもたちの教育にも影響を与え、人々の性格を変えてしまうものは無いなあ、とつくづく思いました。


日本人が温和で冷静で長期的思考に見えるのも、長期雇用のおかげかな、と、帰りの飛行機の中の席取り合戦で、激しくナイジェリア人とバトルした後に、つくづく感じてしまいました・・・。